近所の星、4,049個。時間を送ると動き出す。
Why
夜空の星座は何千年も同じ形をしている、と教わります。 けれど実際には、すべての星がそれぞれの方向へ進んでいます。 ただ、あまりに遠いので、人の一生では動いて見えないだけです。
それなら時間を早送りしてみたい、というのが Near Stars の出発点でした。 太陽から100光年以内にある実在の恒星4,049個を3次元に配置して、 時間を進めると、それぞれの固有運動にしたがって星が動いていきます。
画面の中でしか起きないことではありません。 これは実際に、いま起きていることです。
Features
Series
Near Stars は、宇宙を見上げるためのビジュアライザの三作目です。 ISS 3D が地球のまわり、 Solar System 3D が太陽系の中、 そして Near Stars が太陽系の外側を担当しています。 距離のスケールが一桁ずつ大きくなっていく順番になっていて、 三つ続けて開くと、自分のいる場所がどんどん小さくなっていきます。
どれもブラウザだけで動きます。インストールもアカウントも要りません。
Basics
星をクリックすると、距離・等級・スペクトル型といった数値が出てきます。 見慣れない単位が並ぶので、意味をここにまとめておきます。 Near Stars を開かなくても、星表や図鑑を読むときにそのまま使える知識です。
光年とパーセク。 1光年は光が一年で進む距離で、およそ9兆4,600億キロメートルです。 天文の論文でよく使われるパーセクは年周視差から定義された単位で、 1パーセクは約3.26光年にあたります。 Near Stars が扱う100光年は、約30パーセクの球ということになります。 銀河系の直径が10万光年規模であることを思えば、これはごく近所です。
固有運動。 天球上で星が一年あたり何秒角ずれるか、という量です。 1秒角は1度の3600分の1で、満月の見かけの直径のおよそ1800分の1にあたります。 最大級で知られるバーナード星でも年に約10.3秒角なので、 満月の直径ぶん動くのに約180年かかる計算です。 星座の形が変わらないように見えるのは、動いていないからではなく、この速さだからです。
視線運動との違い。 固有運動は「横方向」のずれしか表しません。 こちらへ近づく・遠ざかる動きは光のドップラー効果から測る視線速度で、別の量です。 距離・固有運動・視線速度の三つが揃って初めて、 その星が三次元空間をどう動いているかが決まります。
スペクトル型。 表面温度の順に O・B・A・F・G・K・M と並び、Oが最も高温の青、Mが低温の赤です。 太陽はG型にあたります。 注意したいのは、近所の星の多数派はM型の赤い矮星で、 そのほとんどは暗すぎて肉眼では見えないことです。 夜空に見える明るい星は、たまたま近いのではなく、遠くても目立つほど巨大で明るい星です。 実際の「ご近所」は、目で見える夜空とはかなり違う顔をしています。
見かけの等級と絶対等級。 見かけの等級は地球から見た明るさで、距離の影響を受けます。 絶対等級はすべての星を10パーセク(約32.6光年)の距離に並べたと仮定した明るさで、 星そのものの実力を比べるための値です。 等級は数字が小さいほど明るく、1等級の差はおよそ2.5倍の明るさに相当します。
Data
表示している4,049個の星は、公開されている恒星カタログの実測値にもとづいています。 位置・距離・等級・スペクトル型はカタログの値をそのまま使い、 時間を進めたときの移動は、各星の固有運動を線形に外挿して求めています。
この方法には限界があります。 近くを通過する星どうしの重力的な影響は考慮していませんし、 距離の測定には元データの時点で誤差が含まれています。 遠い星ほど視差が小さくなるため、100光年の外縁に近い星ほど位置の不確かさは大きくなります。 数万年規模まで時間を送ったときの配置は、 正確な予言ではなく現在の速度が続いた場合の姿として見てください。
それでも、数万年のスケールで星座がはっきり崩れていく様子は実際に起きることです。 北斗七星の柄杓の形も、十万年前と十万年後では別の形をしています。 いま見えている夜空は、たまたま人類がいるこの時期の一場面にすぎません。