惑星は、いまこの並びで回っている。
Why
理科の教科書に載っている太陽系の絵は、たいてい惑星がきれいに一列に並んでいます。 でも実際には、それぞれが違う速さで公転しているので、 並ぶことはほとんどありません。
では今この瞬間はどう並んでいるのか。 それを見るために作ったのが Solar System 3D です。 ブラウザを開くと、今日この時刻の惑星配置が表示されます。 木星が太陽の向こう側にいる日もあれば、火星がすぐ近くにいる日もあります。
Features
Behind
実際の比率で太陽系を描くと、惑星は点にもならず、画面はほぼ真っ黒になります。 距離が桁違いに大きいためです。 だから世の中の太陽系の図は、ほとんどが距離を圧縮して描かれています。
どちらか一方だけを見せると嘘が混じるので、 このアプリでは両方をボタンひとつで往復できるようにしました。 普段は見やすい配置で眺めて、たまに実比率に切り替えて愕然とする。 その落差そのものが、たぶん一番伝えたかった情報です。
Basics
「今この瞬間の惑星の位置」は、観測を待って表示しているわけではありません。 軌道の形を表すいくつかの数値と、基準となる時刻さえあれば、計算で求められます。 この仕組みは高校の物理と数学の範囲で理解できるので、要点だけ書いておきます。
惑星の軌道は、太陽を焦点のひとつとする楕円です。 その楕円を空間の中に固定するために使われるのが軌道要素と呼ばれる数値の組で、 楕円の大きさ(軌道長半径)、つぶれ具合(離心率)、 軌道面の傾き、面の向き、楕円の向き、そして基準時刻での位置、の六つが基本です。 この六つが分かれば、任意の時刻の位置が求まります。
時刻から位置を出すところに、少しだけ厄介な点があります。 惑星は太陽に近いところでは速く、遠いところでは遅く動くため、 経過時間と実際の角度が比例しません。 ここでケプラー方程式という式を解く必要があり、 これは代数的にきれいに解けないので、数値的に反復して近似します。 画面がなめらかに動いている裏で、毎フレームこの計算が回っています。
Basics
火星が夜空でしばらく逆向きに進むように見える現象を逆行といいます。 占いの文脈で名前を聞いたことがあるかもしれませんが、 これは純粋に幾何学の話で、火星の側では何も特別なことは起きていません。
地球は火星より内側の軌道を、より速く公転しています。 内側を走る車が外側の車を追い抜くとき、 追い抜かれる側は一瞬だけ後ろへ流れていくように見えます。 それと同じことが、地球が火星を追い抜くタイミングで夜空に起きます。 視点が動いているために起きる見かけの現象で、実際の軌道運動の向きは変わっていません。
同じ並びが再び訪れるまでの周期を会合周期と呼びます。 公転周期の違いから計算でき、火星の場合はおよそ780日、 つまり2年2ヶ月ほどごとに地球へ近づきます。 火星探査機の打ち上げがまとまった時期に集中するのは、 このタイミングでしか燃料効率の良い軌道が取れないからです。
Solar System 3D で時間を進めると、この追い越しを真上から眺められます。 地上から見上げているかぎり逆行は不可解な動きですが、 軌道面の外に視点を出した瞬間、当たり前の位置関係に見えるようになります。 視点を変えると謎が消えるという体験そのものが、このビジュアライザを作った理由です。